やましたクリニック開院後、4年と5カ月が経過しました。甲状腺・副甲状腺を病む患者さんにすこしでも貢献したいという思いで、スタッフとともに日々頑張ってきました。最近では、甲状腺を専門にされている先生だけではなく、近隣の開業院の先生方のご紹介も増えてきており、昨年(平成22年)は394名の患者さんの手術を受け持つことができました。半分以上が甲状腺悪性腫瘍の患者さんで、この症例数は国内のトップレベルです。手術数の多寡で医療の正確な質ははかれませんが、良好な手術成績や患者さんに満足していただいたことが手術症例数の増加にあらわれたのではないかと思っています。
外来患者さんや手術患者さんが増えてくるのは非常にうれしいことですが、それに対応できる診療体制をつくっていかなければなりません。そこでまず、私なりに考えている当クリニックの役割についてまとめてみました。
当クリニックの役割
1. 甲状腺・副甲状腺を担当する甲状腺外科専門医や甲状腺外科認定施設(認定番号: 第N14006号)は限られています(専門医および認定施設は日本内分泌外科学会のホームページに公表)。
2. 福岡県で登録されている甲状腺専門医認定施設は少ないので(専門医および認定施設は甲状腺学会のホームページに公表)、成人だけでなく小児や妊婦さんまではばひろく、甲状腺の内科的治療もおこなっています。当院の日本甲状腺学会認定専門医施設認定証 (第2007004号)。
3. 手術症例は年々増加しています。バセドウ病の手術(厚生省に手術数の届出が義務化されているので資料掲載されています)の全国4961医療機関の手術数一覧から福岡県内のデータを抽出しました。2008年に福岡県内で80名の患者さんがバセドウ病手術を受けられていますが、原三信病院(やましたクリニック)が48名(60%)を担当しており、甲状腺手術では福岡県の地域医療に重要な役割を担っています。尚、2012年の同様のデータでは、91例中のうち68例(75%)(原三信病院での手術を含む)を当クリニックが担当していた。
4. 大学病院(主として九大病院、福大病院、久留米大学病院)、総合病院、開業されている先生方からの紹介患者を受け持っています。平成22年1月より半年間の手術患者186名の紹介率は86%で、医院・クリニックからが37%と最も多く、民間病院、国公立病院と続き、大学病院からも19名(10%)の紹介を受けています。
これらの役割を発展・継続していくには、現状のままでは困難になることが予想されます。甲状腺・副甲状腺の患者さんへ適切な治療を継続するには甲状腺内科医・外科医を育てることが必要と考えています。大学病院や総合病院外科では、一般的に甲状腺・副甲状腺疾患はマイナーな分野として考えられており、乳腺・内分泌科と標榜し、乳腺疾患を主としているところが大半です。専門医師が一時的にいても診療が継続されているところは非常に少ない状況です。そういう状況のなかで、日本では甲状腺・副甲状腺疾患に特化した専門病院が重要な役割を担っています。
上記のことを考慮し、甲状腺・副甲状腺を病む患者さんへ適切な治療を継続するために、新たな施設づくりを検討しています。平成21年より、甲状腺外科学会、内分泌外科学会の理事・監事を拝命いただき、公私ともに忙しくなりそうですが、甲状腺・副甲状腺に特化した医療でさらに貢献していきたいと考えています。
平成23年元旦