写真集作成にあたって
今回、患者さんの同意を得て、甲状腺の通常手術(いわゆる内視鏡手術ではない、首に傷跡が残る手術)の写真集を作成いたしました。
甲状腺疾患は他疾患と比較して若年女性にも多く、そのため首に傷跡が残ることを気にして、手術をためらう人がしばしばいらっしゃいます。私(佐藤)は耳鼻咽喉科医として、また消化器外科医、乳腺外科医として働いていた経験があり、頭からお尻まで様々な傷跡を見てきましたが、首は傷そのものとしては他の手術(心臓外科の胸部正中切開、胃癌や大腸癌の腹部正中切開、婦人科の下腹部横切開、など)よりキレイに治癒することが多い部位です。とはいっても、胸や腹と違って首は常に露出する部位であることから、その治り具合が大変気になるところです。首の傷は手術直後(術後1~6ケ月)は、発赤やかさぶた、保護テープなどで目立ってしまうこともありますし、切開の位置(鎖骨などの骨に近い位置に傷をつけると目立つ)や方向(縦に切ると目立つ)によっては傷が醜くなることがあります。インターネットで「甲状腺、甲状腺癌」「手術、甲状腺全摘」「傷、傷跡」などと検索すると多数の画像が出てきますが、系統的にきちんと撮影したものは少なく、また、医療機関が載せている写真でもことさら醜い傷の写真のみを載せているものもあるように思います。それに加えて専門医から見ると明らかに傷の位置と方向に問題がある症例も時に見受けられます。
当院では2020年6月より甲状腺内視鏡手術を開始し、通常手術と内視鏡手術を選択できる状況になりましたが、その選択権は患者さん自身にあります。その権利を正当に行使していただく上での参考資料として、今回、通常手術の傷跡の写真集を作成いたしました。(内視鏡手術の症例はまだ少数ですので、症例が集まりましたらアップロードする予定です。)今回は特にキレイな傷や醜い傷を選び出して載せているわけではなく、当院手術例を撮影の同意が得られた分だけアップロードしました。あえてコメントは付けていませんので、患者さん自身がその目で見て判断していただければと思います。
よく「百聞は一見にしかず」と申しますが、それを上回る「百見」を目標に作成し、創部写真100選としアップロードいたしました。手術をこれから受ける患者さん、手術を受けたが今後傷がどのようになっていくか気にされている患者さんの御参考になれば幸いです。
院長 佐藤 伸也
対象患者
①当院で手術を受け、
②2020年10月以降に外来受診され(撮影スタッフの人手の関係で月曜と金曜に限定)、
③写真撮影に同意された患者さん となります。
補足
・「郭清」とついているのは甲状腺癌の手術です。「D1郭清」と「D2、D3郭清」では手術の範囲が異なるので、皮膚切開の長さが異なります。「D1郭清」では皮膚切開は6cm(女)~8cm(男)程度、「D2、D3郭清」では手術内容にもよりますが10~12cm程度です。
・「郭清」とついていないのは良性腫瘍の手術で、皮膚切開は4~6cm度です。
・「原発性副甲状腺機能亢進症手術」では皮膚切開は2~4cm度です。
・バセドウ病の手術では皮膚切開は甲状腺の大きさによってかなり変化します。正常甲状腺と同じくらいの大きさ(15g程度、お薬の副作用や早期の妊娠希望などで手術しか選択肢のない発症初期の方)では、皮膚切開は6cm程度ですが、甲状腺が100g、200gと大きくなっていくと皮膚切開は8~12cmと長くなっていきます。
・個人情報保護のため、顔は写らないように撮影しています。また、年齢も明確にはしておりません。
・当院では創部の緊張を緩和する目的でアトファイン®を術後3ケ月程度創部に貼っていただいております。瘢痕、ケロイド予防の内服薬投与は術直後には原則行っておりません。アトファイン®で皮膚にかぶれが生じるために貼ることが困難な方に対しては必要に応じて外用のステロイド剤を創部に塗布していただいております。
写真集