腎性副甲状腺機能亢進症 (Secondary Hyperparathyroidism)

腎性副甲状腺機能亢進症とは
 慢性腎不全のため透析を受けている患者さんで、食事療法・内科的治療のコントロールがあまり良くない場合に生じやすい病気です。コントロール不良のため血液中リン濃度が高くなると、副甲状腺が刺激されて腫大し、副甲状腺ホルモンを過剰に分泌します。するとカルシウムが骨から必要以上に溶かし出され、血液中カルシウム濃度が高くなります。この状態を腎性副甲状腺機能亢進症といいます。放置すると、腎不全による骨の病気(腎性骨異栄養症といわれているもので、線維性骨炎・骨軟化症・骨粗鬆症・骨硬化症などがあります)になり、骨・関節痛や骨折を起こしやすくなります。それだけでなく、血液中のカルシウムやリンが高くなることにより、血管にそれらが沈着し(石灰化といいます)動脈のしなやかさが失われ(動脈硬化)、心筋梗塞などの心臓や血管系の重篤な合併症をひきおこします。合併症が生じると日常生活に様々な支障をきたし、寿命を短くすることにもなります。

病気を治すには
 腎性副甲状腺機能亢進症に対する治療薬として、経口ビタミンD製剤、ビタミンD製剤、リン吸着剤などが開発され、内科的治療も進歩してきています。しかし、内科的治療で効果がえられない場合は手術療法が確実です。手術療法については後に詳しく述べます。手術以外には、超音波下でおこなうPEIT(経皮的エタノール局所注入療法)という方法もありますが、重篤な心血管系などの症状がある場合や、手術後に再発した場合など手術の困難な患者さんが対象になります。

どんな患者さんが手術を受けた方が良いか

  1. 副甲状腺ホルモンが異常に高い場合:副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウムと関連していますので、両者の検査結果をみて判断します。
  2. 明らかに副甲状腺が腫れている場合:頸部に腫れた副甲状腺があれば超音波で診断できます。副甲状腺は、頸部だけでなくまれに胸部にある場合もありますが、その場合はシンチグラフィー検査やCT検査で診断します。
  3. 画像(骨シンチ、骨レントゲン、骨密度測定)骨代謝マーカーで線維性骨炎・骨回転(カルシウムの取込と溶出)の亢進がみられる場合。
  4. その他血液中のカルシウムやリンが高くそれを内科的治療ではコントロールできない場合、骨関節痛、かゆみ、いらいら感、筋力低下などの自覚症状がある場合。

 
などが手術の対象となります。

どんな手術を行うか
 腎性副甲状腺機能亢進症の手術は、すべての腫大した副甲状腺(通常は4個ですが、 それ以上や以下の場合もあります)をすべて摘出し、そのうちの一部を前腕部に移植します。
 手術は全身麻酔で、1時間から1時間半程度で終了します。手術翌日に透析をうけていただきます。手術翌日から歩行・食事ができ、術後約5日で退院です。尚、入院中のご家族の付き添いは不要です。

手術後の管理
 手術が成功すると血液中のカルシウムが低くなり、カルシウムやビタミンDを飲まなければなりません。これは主として以下の二つの理由によるものです。

  1. 手術前は副甲状腺ホルモンがどんどんつくられており、このホルモンが骨から血液中にカルシウムを溶出していたが、術後は反対にカルシウムが骨に取り込まれるので、血液中のカルシウムが低くなる.。
  2. 副甲状腺ホルモンをどんどん出していた病気の副甲状腺を取り除いたので、術後しばらく(前腕部に移植した副甲状腺が働くまで)副甲状腺は機能しない。

これでおわかりかと思いますが、カルシウムやビタミンDを飲まなくてはならなくても、それは手術の合併症ではありません。自分の身体が良い方向(術後の骨の回復)に向かっていると考えてください。

手術に関する合併症
 重要な合併症としては、反回神経麻痺による嗄声(しわがれ声)があります。反回神経は副甲状腺の近くを通るため、副甲状腺腫を摘出する際にかるく神経にさわるだけで反回神経麻痺がおこる可能性があります。尚、副甲状腺腫の性質が悪い場合(癌の頻度は1%以下)は、神経に浸潤(食い込む)していることもあります。そのときには一部をけずったり、神経を切り取らなければならないこともあります。甲状腺癌を合併した患者さん以外には、基本的には反回神経麻痺はありません。もし生じたとしても、通常3ヵ月以内に回復すると考えます。その他合併所には「出血」がありますが、私はそれらの合併症を経験したことがありません。